胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)は、胃酸などの胃の内容物が食道に逆流して、食道がただれたり、潰瘍(かいよう)ができる病気です。自覚症状がでないことも多いのですが、胸やけがする、胸が痛むなどの症状があります。放っておくと食道癌なる危険性も指摘されています。
胃酸や胃の内容物が食道、口腔に逆流
※逆流性食道炎との違いについて
内視鏡で見て食道に傷や炎症があり、胸やけなどの症状があるものを「逆流性食道炎」といいます。内視鏡で観察しなくても、胸やけなどの症状があるものを「胃食道逆流症」といいます。
内視鏡で異常がみられないことが多いため、日本消化器病学会が2009年に診療のガイドライン作成するのにあ� �り、逆流性食道炎ではなく胃食道逆流症とするなど、最近では世界的に胃食道逆流症とする傾向にあります。
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●胃食道逆流症の有病率※1
肥満、喫煙、飲酒などの生活習慣の悪化、食生活の欧米化、ストレスなどにより、胃食道逆流症の患者数は増加しているとされています。
調査対象者の年齢、性別等により異なりますが、日本人の10%前後(4.0〜19.9%)がかかっているとされています。男性に多い傾向にあるものの、女性は60歳以上に増加、重症化する傾向にあります。
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●胃食道逆流症の原因
胃食道逆流症の原因は、現在のところはっきりしていませんが、肥満、ストレスなどが原因と考えられています。これらが胃や食道に影響を与えて、逆流症状をおこしているのではないかとされています。
胃食道逆流症をおこしやすい日常生活
本体の目盛りと発作
喫煙 ストレスの多い生活 食べ過ぎ 前かがみの姿勢になることが多い生活 お酒をよく飲む 不規則な生活(夜更かし、就寝前の夕食) 激しい運動の多い生活 甘いもの、脂肪の多いもの、刺激の強いものが多い食事 肥満あるいは肥満傾向 |
●胃食道逆流症の症状※2
胃食道逆流症の主な症状は胸やけですが、胸の痛み、胃のもたれなど様々な症状があります。また、喘息、肺炎、不眠、睡眠時無呼吸症候群、食道癌などの病気を引きおこすこともあります。
胃食道逆流症の自覚症状
胸やけがする 胸が痛い 胸のつかえや違和感 食べた後にムカムカする 食べ物がつかえる 胃がもたれる 胃が痛む のどの違和感 声のかすれ |
胃食道逆流症の合併症
喘息 貧血 食道がん 肺炎 胸痛 中耳炎 不眠 睡眠時無呼吸症候群(いびき) 肺線維症 食道狭窄(きょうさく) 咽頭炎 喉頭炎 副鼻腔炎 慢性咳嗽(慢性の咳) バレット食道 |
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●胃食道逆流症の治療方法
胃食道逆流症の治療には内服薬の服用と生活習慣の改善があげられます。まれに手術をおこなうことがあります。内科、消化器科、消化器内科、小児科等で治療をおこないます。
内服薬の服用では、胃酸の分泌を強力に抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」が最も多く使用されます。その他に、食道の粘膜を守るために「H2ブロッカー」が使用されます。
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生活習慣の改善では、1)脂肪分の多い食物の摂取を避ける、2)規則正しい食生活を送る、3)就寝前の飲食は避けて枕を高くして寝る、4)過度の飲酒は避ける等をおこなっていきます。
●胃食道逆流症の口の中の症状※3
胃食道逆流症にかかると、睡眠中など自分では気付かない間に、胃液や胃の内容物(ph4以下)が口の中まで逆流することがあります。歯はph5.5以下の酸で溶けるため、この状態が続くと、酸によって歯が溶けて酸蝕症、虫歯、知覚過敏をおこします。
睡眠中の歯ぎしりは、歯が削れる、折れる、知覚過敏、歯周病を悪化させる原困となりますが、自分で気付くことはほとんどありません。胃酸などの胃の内容物が食道に逆流すると、あごの筋肉 の運動も活発となり、歯ぎしりをおこすとされています。
ドライマウス(口腔乾燥症)を訴えることも多く、島根大学医学部の調査によると、胃食道逆流症患者の約半数が口の渇きを訴え、37%が唾液の分泌量が減っていました。
その他、まれに酸によって味覚障害をおこすこともあります。
胃食道逆流症と口腔の病気
胃食道逆流症が引きおこす口の中の症状
虫歯 歯ぎしり 酸蝕症(酸蝕歯、特にかみ合わせの面や歯の内側) 口臭 口の渇き(ドライマウス、口腔乾燥症) 前歯が欠けることによる審美性の低下 歯がしみる(知覚過敏) 奥歯が崩壊することによるかみ合わせのずれ 舌の鋭敏化、灼熱感、かゆみ、痛み(舌痛症) 口の中の酸味や苦み(味覚障害) |
酸蝕症で内面の象牙質が露出した歯(酸蝕歯)
新生児皮膚炎の種類
関連するページ 酸蝕症 歯ぎしり 知覚過敏症 味覚障害 舌痛症(舌の痛み、違和感)
●胃食道逆流症と唾液
2009年7月にテレビ放送された「ためしてガッテン!」(NHK)では、胃食道逆流症の特効薬は「唾液」であると紹介されました。唾液には緩衝作用(かんしょうさよう)という性質があり、強い酸を中和することにより私達の体を守ってくれます。
食後は胃液が出て逆流がおきやすくなるためガムをかんで唾液を出す、寝ている間は唾液の分泌が減るため、寝る前に物を食べないことが大切です。また、唾液の出ない病気「ドライマウス(口腔乾燥症)」の症状があると、胃食道逆流症の症状� ��悪化するので、ドライマウス治療も欠かせません。
唾液が減少すると胃食道逆流症の症状が悪化
関連するページ ドライマウス(口腔乾燥症) ドライマウスを引きおこす全身の病気 唾液の働き
●胃食道逆流症と歯科治療
胃食道逆流症にかかると、胃酸などにより歯が溶けたり、虫歯になりやすくなります。そのため、歯科医院では酸蝕歯や虫歯の治療、歯のクリーニング(PMTC)などの予防処置をおこないます。
歯ぎしりを治すためには、ナイトガード(歯ぎしり防止装置)の作製をおこないます。
また、胃食道逆流症にかかっている人は睡眠時無呼吸症候群を合併している割合が高いため、睡眠時無呼吸症候群の治療をおこなうこともあります。
ナイトガード(歯ぎしり防止装置) 歯のクリーニング(PMTC)
関連するページ 歯のクリーニング(PMTC)
※1 大原秀一(東北労災病院)ら 全国調査による日本人の胸やけ・逆流性食道炎に関する疫学的検討、日本消化器病会雑誌102(8)2005etc. ※2 Katelaris PH. An evaluation of current GERD therapy: a summary and comparison of effectiveness, adverse effects and costs of drugs, surgery and endoscopic therapy. Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2004;18 Suppl:39-45. ※3 関根浄治: GERDは歯科疾患の原因となり得るか?. 治療, 92: 481-484, 2010.
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